2011年01月25日

第10回「フォリオリーナ・デッラ・ポルタフォルトゥーナ」

1月23日(日)軽井沢にあのイタリア料理店が移転再開した。
フォリオリーナ・デッラ・ポルタフォルトゥーナ。イタリア料理
好きなら一度は聞いた事のある店名であろう。2002年中目黒で
オープンし、2003年5月からは一日一客の完全予約制のレストラ
ンとなり、会員制でないにも関わらず、新たに予約を入れるのは
ほぼ不可能とまで言われた超人気店であった。2009年6月で一旦
フォリオリーナは休止し、その後個性的なトラットリーアとして
再出発している。この「レストラン空間考」でも採上げさせても
らった「アンティーカ・トラットリーア・ノスタルジーカ」であ
る。シェフ小林幸司さんは、かねてから計画していた軽井沢移住
計画を実行し、先日ようやく自宅兼リストランテの建物が完成し、
ようやくそのフォリオリーナが再開することになった。
 「リストランテというのは、イタリア語の語源をたどるとリス
トラツィオーネ、つまり修復、復興するという意味になる。トラ
ットリーアの語源がトラッターレ、つまり処理するという意味と
比べるとわかるように、食を通じて人生や生活をリフレッシュす
る場所じゃないとならない。つまりリゾートレストランこそ自分
の目標とするもの」と常々語っていたように、都会の中のビルの
一室ではなく、適度に都心から離れることによって移動の時間も
含めて食事をしに出かける事を楽しんでもらいたい。そして自分
の店で過ごす時間は完璧なる「非日常」でなければならないとい
う。ではどのようにしてその非日常が演出されるのか、オープン
前日にお邪魔してしっかりとその秘密を探ってきた。

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 東京駅から約1時間10分、軽井沢駅に降り立つと、あたりはう
っすらと雪化粧。軽井沢駅からタクシーに乗り、「中軽井沢の星
野エリアを超え、塩壷温泉ホテルの向い側にある小林さんのお宅
にお願いします。」と伝える。そう、レストランの名前ではなく
シェフの名前を伝えるのだ。軽井沢のタクシーでは他にも「エル
ミタージュ」と言えば「あ、田村さんのところね」と帰ってくる
ように、シェフはみんな店名ではなく名前で認識されている。明
らかにこの時点で、気持ちは遠い友人宅を尋ねて来たような高揚
感に包まれる。車は星野エリアを過ぎてしばらく行くと何も看板
のない小径を左に曲がる。見えてきたのは黄色いワーゲンビーグ
ルが泊まる一軒家。水平な屋根と床のデッキが印象的な佇まい。
車に気づいて小林シェフがコックコートで出迎えてくれた。

zenkei1.jpg











夜ともなると周囲はまったく明かりもなく、完全な闇に包まれて、
建物だけが光に浮かび上がる。軽井沢でも特に神秘的な空間とな
っている。
 玄関にはLa Salaという表示。La Salaとは、いわゆるホール、
或いはメインルームの意味。左側にはKobayashiと書かれた扉が
あるが、こちらは小林シェフの自宅の玄関。扉をあけると正面に
は彼の書棚がおかれている。古いレシピ本や食材百科事典などが
目に入る。化粧室の扉、ワインセラー、厨房の入口の先に個室へ
の入口がある。そう、新しいフォリオリーナは個室が1室のみ。
4人テーブル(最大6名)と暖炉、そして森に向って放たれた大
きな窓があるだけ。冬を中心に営業をするという小林さん。まさ
に一日一客のためのしつらえのみが用意されていた。
部屋は中目黒の店と同じような印象の仕上げ材が使われているの
で、軽井沢であるにも関わらず、違和感なくあの「フォリオリー
ナ・デッラ・ポルタフォルトゥーナ」であると感じる。唯一違い
を感じるのはモスグリーンの革で仕上げられた壁。以前のフォリ
オリーナは焦げ茶色の木材、黒い床、左官の壁と天井であった。

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革という素材は新生フォリオリーナの新しいシンボルとなってい
る。個室には隣の厨房との間に小窓があけられていて、厨房の様
子がほんの少し伝わってくる。しかしその小窓から見えるものは
厨房器具でもなく、調理をするシェフでもなく、やはり書物が並
んだ棚。小林さんにとってのここの厨房は、厨房というより、む
しろアトリエといった印象。とても綺麗に整理整頓され、そして
森に面した大きなガラス窓で覆われている。料理を楽しむために
だけ特別にデザインされた個室と、料理を創造するためにデザイ
ンされたアトリエのどちらもが、軽井沢の森に囲まれて存在して
いるといった印象だ。 

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個室の窓の先には奥行きのあるテラス空間が設けられて、そこに
も椅子席が並べられている。夏になって気候が暖かくなったら、
今度はこのテラスで食事を楽しんでもらう予定だとか。そしても
う一つ、彼がやってみたいことがある。それこそがこの軽井沢の
店のテーマとなった「天井のないレストラン」である。建物は自
宅部分とレストラン部分がL字型に配置され、それらに囲まれた部
分が広々とした庭となっている。夏の間、小林さんはフォリオリ
ーナの営業をやめて、この中庭を使って「天井のないレストラン」
を営業するという目標を持っている。天井のないレストランでは
子供連れのファミリーが周囲の客に気兼ねする事なく子供達と一
緒に遊びながらゆっくりと食事が楽しめる。そんな夏のリゾート
に相応しいレストランに育てていきたいと語ってくれた。

terrace1.jpg

 一日一客だけの店だからこそできる事。昼からじっくり時間を
かけてこの小林さんの「家」で過ごす時間を楽しむとか、夜更け
までシェフと語り合うとか。そんな客のわがままを何でも実現で
きてしまうような気がする。軽井沢にきて、小林マジックは更に
パワーアップして我々を楽しませてくれそうだ。次は夏にあって
「天井のないレストラン」を楽しみに訪れてみたい。

menu.jpg


フォリオリーナ・デッラ・ポルタフォルトゥーナ
アルベリーニ(屋外レストラン部分)
長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-689
電話0267-41-0612
posted by ニコラス at 01:52| Comment(1) | レストランインテリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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