2009年09月26日

第7回「リストランテ イ・ルンガ」

今年3月まで西麻布のイタリアンレストラン「ラ・グラディスカ」
の料理長を務めていた堀江純一郎さんが、8月25日から新天地、
奈良であらたなスタートを切った。
店の名前は「イルンガ」=Ilunga イタリア語でアルファベット
のJ(ジェイ)をI lungo = イルンゴ、つまり「長いI」という呼び方
をする。JapanのJ、そのイタリア語読みに、斑鳩「いかるが」を
組み合わせた造語が「イルンガ」である。 

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場所は奈良公園の中心に位置し、東大寺参道の入口まで30メー
トルくらいの場所にある。古い武家屋敷を改造した施設で、土塀
と長屋門が店構えとなる実に奈良らしい街並の中にある。堀江さ
んはイタリアでの長い経験をもとに、食が東京などの大都市圏に
集中する日本のレストラン業界の現状に対し、常に疑問を投げか
けてきた。自ら水俣や新潟などの地方に出かけて行って、その土
地の生産者と交流し、土地の作物の魅力を訴えてきた。彼がなぜ
新天地を奈良に求めたかについては、いくつかの理由があるであ
ろうが、最初にこの場所を訪れた時に、その恵まれた環境と自ら
が訴えてきた地方の魅力をどちらも併せ持つロケーションと、古
い建物だけが持つ、歴史と時間の積み重ねが、イタリアで彼が大
切にしてきたものと重なって思えたのだという。
 この店では2つのコースメニューが用意されている。一つが地
元の素材だけでつくる「大和コース」、もう一方が地元の素材を
中心にしながらも美味しい旬の素材を日本各地、イタリアからも
取り寄せて作った「都のコース」。奈良を意識しながらも、自ら
の料理の原点であるピエモンテを忘れないという姿勢が伝わるメ
ニュー内容であった。
 以前このコーナーでも紹介した江戸川橋の「ラ・バリック」と
同様、日本家屋の良さを十分活かしながらレストランとして営業
できるように改造しているが、バリックが民家であるのに対し、
イルンガは武家屋敷。内容はかなり異なる。道路に面した土壁部
分に鉄板をくり抜いたロゴの看板がぼんやりと浮かび上がる。近
づいてみないと何の店なのかわからない。長屋門の格子戸を通し
ては、玄関までつづく飛石の列がほのかに見え、実に日本的な路
地空間が演出されている。玄関の右側には大きめの個室が位置し
、玄関の前を通ると中の賑わいが漏れてくる。

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玄関から室内にかけては土足で上がれるように、石とタイルの床
で構成されている。玄関ホールの正面には受付レセプションのカ
ウンターがあり、天井は高い吹き抜けになっていて古い小屋組が
あらわしになっている。受付からメインダイニングの様子が感じ
られるように、エントランスホールとメインダイニングとの間の
壁にはあらたに開口が設けられ、格子がはめられている。玄関の
見返りには大きなガラスの嵌め殺し窓があるが、ここは選出の玄
関が家人のものとすれば、お殿様がカゴのまま出入りするための
特別な玄関であったところ。その部分を活かして庭を眺める開口
部としている。


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メインホールは全てフローリングで仕上げられ、天井は元の竿縁
天井をそのまま活かし、照明の存在感をなくすためにさらに掘込
んだ部分にダウンライトを埋込む工夫がされている。6つの円卓
がゆとりをもって配置され、中庭を挟んだ厨房でのシェフ達の動
きを眺められるようになっている。


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厨房をオープンにする店が最近は多くなってきた。シェフのアト
リエを公開することで、そのこともエンターテインメントの一つ
と捉えている。この店では和の空間の良さを殺さずその楽しみを
演出するために「中庭」という外部空間をうまく活かして厨房の
公開を実現している。逆に言えば、シェフの立つデシャップから
もメインホールの様子が見て取れるということである。 イルン
ガにはもう一つ特別な空間が存在する。それは6畳の本格的な茶
室である。草庵風のこの茶室も特別な個室として使用されること
になっている。ここではさすがに靴を脱ぎ、座椅子で畳に直接座
って堀江シェフの料理を楽しむことができる。まだ飾り付けも行
なわれていない床の間に、何が飾られるのかも楽しみである。

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食事という目的はそれだけでも十分に旅をする目的となりうると
思うが、食だけではなく文化や自然といった地域固有の情緒を感
じることも、また旅の楽しみの一つかもしれない。 東京から飛
び出し、日本の奥座敷に新しい活躍の場を求めた堀江純一郎さん。
奈良という土地ならではの食の楽しみ方を提案して行ってもらい
たい。

リストランテ イ・ルンガ
奈良市春日野町16番地
電話:0742-93-8300
営業時間:11:30〜14:00(L.O)
     18:00〜22:00(L.O)
定休日:不定休
posted by ニコラス at 21:01| Comment(4) | レストランインテリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。
イルンガのある場所は奈良国立博物館のお向かい。
観光で奈良を訪れた方には、良い場所だと思います。
この地で息の長いお店になるには、他府県から、「イルンガ」のお料理がいただきたくて、奈良に来るというというお客様を、どれだけ増やせるかと言うことではないでしょうか。東京や京都にはそういうお店が沢山ありますが、奈良にはまだないように思います。
是非、頑張っていただきたいです。

10月8日 BS日テレPM9時〜10時「皿の上の人生」
で放映されます。
Posted by おぜん at 2009年09月28日 11:10
おぜんさん
コメントありがとうございます。
こういう空間があるのがまた古都奈良の魅力でもありますね。
その魅力的な環境に惚れたシェフがどんな展開をみせてくれる
のかがとても楽しみです。
8日ですね。ぜひ観てみます。
Posted by ニシモリ at 2009年10月06日 21:55
はじめましまて。
ブログを拝見して、さっそく行って来ました。
なるほど、良いお店ですね。三人掛けのテーブルは、かなり大きな丸テーブルですが、全体に窮屈な感じがしない。
中庭が見えるのも、ゆったりとお食事が頂けます。
何より、お店に行く道中から、もう、食事のストーリーは、始まってる。素晴らしいです。
Posted by ごくらく at 2009年10月10日 08:34
「きゃ〜、素敵なブログ」と思って読んでいたら、西森さんのブログでした。アサリに続き、クーカルのフォリオリーナの夜にお会いできて嬉しかったです。今回はアサリの時に西森さんにクーカル奈良のお話をお伺いして、どうしても行きたくて、今週末は香港に行くのに無理矢理行っちゃいました。
奈良からの帰りに、なんとなく坂田さんの顔を 見に行きたくなっちゃったのですが、江戸川橋も西森さんのお仕事だったのですね。スッキリしました。また、美味しい席でご一緒できたらな〜と思っています♪

Posted by 道明寺さくら at 2009年11月17日 19:44
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